第1話「不思議なラケット」 |
轟音とともに屋根と壁が吹き飛ぶ。 「ふははははは。ここに隠れていたか、不二周助!」 闇と吹きすさぶ嵐にくらまされて姿は見えなかったが、不吉な声が響き渡った。同時に瓦礫がすさまじい勢いで叩き付けた。 「危ない!!」 不二はとっさに手塚と、偶然そこに居合わせた手塚の友人・乾を背後にかばった。生まれつきの超能力でバリヤーを張る。しかし、それが今できるせいいっぱいのことだった。ラケットが手塚のものになってしまった以上、自分には悪と戦う手だてはない。けれど、普通の中学生である手塚たちを戦いに巻き込むわけにはいかなかった。 「逃げて、ふたりとも! 僕が時間をかせぐから」 ゾクゾクと体が震えた。 ハスキーで艶のあるその声は、いま、命がけの悲壮な決意を秘めている。 おそらくは、ラケットが使えない以上、不二に勝ち目はないのだ。それでも身を挺して自分たちを守ろうとしている。 その声のあまりの真剣さに、あまりのけなげさに、体の芯が熱くなった。 欲しい。この少年が。不二周助が。 「不二」 手塚は、不二の肩をつかむと、強引に自分の後ろに下がらせた。 宇宙の悪がどれほど強くても、負けるわけにはいかない。不二をほかのだれかにわたすことなどできない。それが人間でも悪魔でも。 「手塚?」 セクシーな声がおのれの名前を呼ぶ。 こんな状況だというのに、手塚は笑った。 「下がっていろ。お前のことは、俺が守る。このラケットで」 (次回 第2話「クニミツン☆誕生」 お楽しみに!) |
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